RI 国際ロータリー発祥の地 シカゴが熱い
眞野 博
ロータリー発祥の地、アメリカイリノイ州のシカゴ。お隣のミシガン州の自動車の町デトロイトに陰りが見えてきている今、シカゴの世界に及ぼす影響力は、その誕生と歴史と共に、益々その重要さを増しています。
「穀物・家畜が金融を動かす」というシカゴの諺通り、シカゴの穀物相場が与える世界の食糧不足がどのような推移を辿るか、ひいてはその国の政権までも危うくする要素を含んでいることに、世界中の視線、注目は集まっています。
2008年7月7日、日本・北海道で行われた洞爺湖サミットでは、G8先進8カ国だけではなく、なんと世界21カ国の首脳が集まり、地球温暖化対策ばかりか、アフリカ7カ国の首脳とは食糧不足に対応する諸問題がG8首脳と共に最初に討議されました。
大雨によるミシシッピー川の氾濫で水浸しになったミズーリ州。
シカゴ発展の礎となったといえるアメリカの穀倉地帯は今年の大豆、トウモロコシ、小麦の収穫が見込めない程のひどい被害で、ブッシュ大統領も見舞いに駆けつけ、その復興に全力を尽くすことを約束しています。
日本では大豆といえば、味噌、納豆、醤油の御三家に加えて天ぷら油等。トウモロコシはマーガリンやサラダ油等。小麦はパン、スパゲティ、天ぷらにタコ焼き、ケーキ等。
私達の日常生活に欠かせないものばかりです。更にアメリカではトウモロコシの収穫量全体の4分の1がバイオ燃料の材料として、又ブラジルでは砂糖キビが用いられるのですからこれ等食糧の価格が世界中でつり上がるのも無理はありません。
「飢え死にするより、自動車を動かしたほうが良いのか?」そんな疑問から、ベルギーのフランドル地方では公営バスのバイオ燃料使用停止に踏み切り、EUでも議論が起こっています。
洪水がある一方で、旱魃。アメリカは勿論、オーストラリアでも生産が見込めない小麦等、商社はその製品の買い付けに躍起になっています。
又、日本人は「遺伝子組換え食糧はイヤ!!」というので、尚更その調達は困難で、その為高い作付け生産代金を揃って確保・輸入している始末。これもいつまで続くか不安です。
しかしこれらの食糧が全て日本に入ってこなくなると、筆者が経験した1945年、東京下町の食糧危機がやってくることは間違いありません。
当時の日本は食糧がなく、特に下町ではアメリカから放出された、今なら鳥や豚のエサにしかならない大豆のしぼりカス"フスマ"を、水で練って鍋に油もしかずに焼いただけのものを食べていたのです。
今ではこれらの飼料の値上がりも激しく、その為に酪業家がつぶれ、ミルクもクリームもバターも不足し、クッキーもケーキもアイスクリームも乳製品全てが駄目となったら今の人達はそんな生活に耐えられるでしょうか?
その連鎖反応からか、エジプトではパンの価格が昨年の5倍、お米までが昨年の3倍強に釣り上がりました。
フィリピンでは1kg50円の米が75円に値上がりして貧困層が抗議のデモ。
アフリカのギニアでは暴動で130人以上の死者が出る始末。これらの騒ぎを見て米の生産国インド・ベトナム等の国々が輸出規制をして自国の食糧確保に躍起になっています。
反面、今まで米の価格が安過ぎて採算がとれず生活不安が解消されなかったアフリカの農家が、米の暴騰で農民に明るい兆しが見えてきたというニュースもあります。
世界の農産物穀物担当者会議では、食糧生産国の輸出規制を解除しろという勧告まで出すテンヤワンヤの大騒ぎで、こんなことも今度の洞爺湖サミットでのアフリカ首脳者との会議で議題とされた理由があったのです。
穀物ばかりか、急激に発展を続ける中国・ブラジル・ロシア・インド或いは発展途上国の需要をまかなう為の鉄の生産量増加、或いはそれをまかなう為の電気を生み出す火力発電所での使用量の増加等々、これらに用いられる石炭の価格はウナギ登り。
その影響から、鉄製品、鋼材の値上がりがマンションの建設資材の高騰を呼び、さらにマンションルームの価格の値上がり、販売不振、銀行の購入資金貸出しの選別、業者への貸し渋りによる不動産業者の倒産という、サブプライムローンとは違った、金融不安が起こっています。
2007年8月、ヨーロッパの鉄鋼メーカーは一度自動車鋼板の値上げをしたばかりなのに、ヨーロッパで生産する日産自動車に対し、更に20%の値上げ交渉に踏み切りました。
鉄鉱石生産国の生産費・輸送費の値上がりなどがその背景にあり、これが日本にも波及する恐れが出てきそうです。
発展著しい中国では資源獲得の為、なり振り構わずアフリカ・オーストラリア・中近東などにその開拓の手を伸ばしているし、その北朝鮮寄りの姿勢も、そこに眠る稀少鉱物資源(レアメタル)の獲得にあるのも一つの要因とさえ云われています。
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