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第六章 神の為に金儲けをし利益を社会に還元する
戦争、経済の動向、人口科学技術の発達、気候、紛争、政策等々の時代の流れを素早く読み取る永年の経験と勘、それによってもたらされる商品取引から上る莫大な利益。
アメリカ流金儲けの原動力は別項で述べたとおり宗教革命から出発していました。
ドイツ生まれの炭鉱夫の息子マルチンルッター(1483~1546)は、豪華なカトリック教会、司祭、献金、金で買う罪からの逃れ或いは、誤った経済活動への教え等に疑問を持ち、人間を罪から救うのは、夫等ではなく神のみが可能にするとして、ローマの堕落をなげいて、ウィッテンベルグ城にあるカトリック教会の扉に1517年95ヶ条の抗議文を貼り、ここに宗教革命の幕を切って落としました。
「教会や聖職者の仲介は不要。我々は聖書の教えに従うことによってのみ救われ、身分の上下や職業は神の惠みとは関係なく存在し、どんな職業の人であってもそれにいそしむ事は神から与えられた使命である」
今迄の考え方とは違って、職業人の経済活動を奨励するという近代的な考え方を述べたのでした。
それは職人や商人は三流。まして商人のように利ざやを稼ぐ商売人は邪道と考えられていたのでした。
次いで北フランス生まれのカルバン(1509~1564)が現われ、ルッターより厳格でより強い聖書中心主義を唱え、これらの人たちを後にカルバン派と呼ばれる強力な信者の集団を作り、アメリカへ渡って新天地を切り開いたのでした。
「人は絶対権威者である神に服従しなければならず、人が神から救われるという確信を持つ方法は、自分の持つ職業或いは労働に勤しむ事であり、禁慾を守りそれらの結果として得る蓄財はそれこそが神の恩寵である」と説いたのでした。
この人達を長老派とも呼び、スコットランド、北アイルランドに広がり、今日まで続くカソリック教徒のアイルランドと、プロテスタント長老派北アイルランドの間の紛争は耳目の新しいところです。
カトリックに抗議(プロスティチュート)する人達をプロテスタントと呼び、この連動はイギリスにまで及び、イギリスの学者ウィクリフ(1320~1384)は14世紀にローマ教会に反対し、今筆者が目にしている英訳聖書を完成し、"宗教革命の暁の明星"と呼ばれプロテスタントの普及に尽しました。
しかし、イギリスはカトリックとプロテスタントの架け橋、つまり中間路線をとって相変わらず、司祭、執事、聖職制、豪華な教会を作り独自のイギリス国教と定められたのでした。
イギリスの王位継承、結婚式などに見られる豪華な教会の内部などによって私達にも良く知られています。
この中道路線にあきたらず、カルバンの教えに賛同する長老派の人達が1620年、ピルグリムファーザーとなってアメリカに渡り今日の繁栄の基礎を築いたのでした。
禁慾を守った蓄財は神の恩寵の証しとなり、金こそ権力、世の中金で買えないものはない、金持ちになれるのに貧乏でいることは自分に不正直であったり友達に不親切である証となり、一攫千金を求める人のよき教えとなりました。
シカゴにロータリークラブが出来る少し前に書かれた、ラッセル・H・コンウエルの"ダイアにあふれる"というこれ等の内容に満ちた本を読んだ人たちはこの通りに行動することが善であると考えアメリカの富を築いたのでした。
この考え方が形こそ違え、今の穀物、石油、金銀パラジュームレアメタル等々の投機集団となって、世界中の富を求めてさまよい歩く幽霊の如き存在となって我々を国を苦しめているともいえるのです。
アメリカ財閥の代表ともいえるロックフェラーは「神の為に富を築いた」と語っているし、それだからこそ、アメリカの富豪はその富を社会に還元しているのです。
1890年シカゴ大学はこのロックフェラーによって創設された名門大学です。
今日ではアメリカのメディア王といわれるCNNのテッドターナー氏は数々の社会奉仕団体をつくり、環境保全、人口問題、健康、或いは574に上るこれ等の補助金、或いは個人としては初めての国際連合への世界平和維持の為の10億ドル(1000億余)等、その寄付の総額は1400億にも達しています。(ザロータリアン2月号インタビュー)
その額、或いは一代にして築き上げた財産の巨額さに驚かされますが、彼の父はロータリアンでロータリーの職業奉仕のことを若いときから聞かされ、彼自身も若い頃ロータリアンだったことを思い合わせると、職業奉仕、ヴォケーショナル即ち神から与えられた職業、それにいとしみ、金儲けをし、社会に還元するという一つの構図が見えてきます。


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